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「単願制」見直しで公立高校入試が変わる?政府が「デジタル併願制」導入へ本格検討

2025年4月22日、石破首相が主導する「デジタル行財政改革会議」において、公立高校入試のあり方を大きく変える可能性を秘めた政策方針が示されました。それは、現在多くの都道府県で導入されている「単願制」の見直しと、「デジタル併願制」という新たな仕組みの導入です。本記事ではその背景、具体的な仕組み、今後の見通しについて詳しく解説します。


「単願制」の現状と課題

現在、日本の公立高校入試では、志望校を1校に絞って受験する「単願制」を採用している自治体が大半です。大分県の公立高校入試も同様で、この制度のもとでは、受験生は一発勝負で志望校を選ばねばならず、チャレンジ校に挑戦するリスクを避け、確実に合格できそうな学校を選ぶ傾向が強くなります。

分かりやすい例でいえば、

本当は上野丘高校を受験したいけれど、不合格になるリスクが高いため舞鶴高校を受験する

という選択をする人は非常に多いです。

特に、経済的な理由から私立高校ではなく公立高校を選ぶ家庭の子どもたちは、不合格のリスクを避けるために、学力よりも安全性を重視して出願するという現実があります。これが、受験生の自由な進路選択を阻害していると指摘されてきました。


新たな提案:「デジタル併願制」とは?

石破政権が今回検討を本格化させると表明したのが「デジタル併願制」という新たな仕組みです。この制度では、受験生が志望する複数の公立高校に順位をつけて登録し、1回の共通試験を受験します。

その後、試験結果や内申点、面接の評価などを総合的に加味し、各高校の合格基準に照らして、成績が到達している中で最も志望順位の高い学校に合格が割り当てられるというシステムです。

ポイントは、すべての合否判定がシステム上で一元的に行われる点にあります。受験生にとっては複数の学校を受験する負担がなくなり、学校側にとっても個別の判定業務が減るという利点があります。


なぜ今、「単願制」見直しなのか?

背景には、私立高校授業料の実質無償化があります。2024年度から公立高校の授業料は完全無償となり、2025年度からは私立高校でも授業料の実質負担がゼロになります。これにより、設備や進学実績に優れた私立校への志望者が急増することが予想されています。

一方で公立高校は人気がなくなり、定員割れが起こりやすくなる可能性があります。

この流れを受けて、公立高校の魅力を高め、受験生にとっての選択肢として残すには、制度面の改革が不可欠とされていたのです。


海外や国内でもすでに活用例あり

「デジタル併願制」に類似したシステムはすでに世界各国で導入されています。たとえば、米国ニューヨーク市の高校入試では、受験生が複数の高校に志望順位をつけ、1回の統一試験の結果とアルゴリズムをもとに進学先が決定されます。

また、日本でも保育所の入所調整にこの仕組みが利用されており、受け入れ側の負担軽減や保護者の満足度向上に寄与しています。こうした既存の実績をもとに、高校入試への応用が期待されているのです。


政府の対応と今後の動き

石破首相は「デジタル併願制」の導入に向け、文部科学省およびデジタル庁に対し、希望する自治体での試行的導入を具体化するよう要請しました。入試制度そのものは各都道府県の教育委員会の裁量に委ねられていますが、政府はシステム開発や制度設計の支援を行い、先行事例を生み出すことで全国的な普及を目指すとしています。

モデル自治体を通じて制度の実効性を検証した後、より多くの地域に展開される可能性があります。


公立高校にとっての再評価の機会に

「デジタル併願制」は、単なる利便性の向上にとどまらず、制度による格差や不安を取り除き、すべての受験生が公平に挑戦できる入試制度の実現をめざすものです。とりわけ、挑戦する機会を奪われてきた受験生にとっては、学力相応の進路選択が可能になる重要な一歩となるでしょう。

また、公立高校にとっても、魅力の再評価と発信が求められるタイミングです。新制度とともに教育内容や進路指導の質の向上に取り組むことで、私立志向の風潮に対抗できる可能性も広がります。


おわりに

受験制度は社会全体の価値観や教育観を反映する大きな仕組みです。今回の「単願制見直し」および「デジタル併願制」導入の動きは、公立高校の在り方、受験生の進路選択、そして教育の公平性を見直す好機となるかもしれません。

今後の政策動向や各自治体の動きから目が離せません。

ふるさと納税するなら、ふるなび。

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