令和7年度全国学力・学習状況調査 調査結果について(※国立教育政策研究所ホームページへリンク)
2025年7月14日、文部科学省から令和7年度(2025年度)全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の速報が発表されました。
今回の結果では、小学校・中学校ともに国語と算数・数学の平均正答率が、前年度よりも下がったことが明らかになりました。特に、中学校の国語では、自分の考えを記述する問題で無解答率が高いなど、新たな課題も見えてきています。
また、今回は全国の小学6年生約18,470校と中学3年生約9,584校を対象に、国語、算数・数学、理科の教科調査と質問調査が行われました。注目すべきは、中学校の理科が初めてCBT(コンピューターを使用したテスト)形式で実施され、平均正答率ではなく「平均IRTスコア」という新たな指標で示された点です。
この記事では公表されたばかりの令和7年度全国学力テストの結果から、子どもたちの学力に今、何が起きているのか、そして、この結果をどのように受け止め、今後の家庭学習や学校との連携に活かしていくべきか、具体的なポイントをお伝えします。
全国学力テストとは?目的と令和7年度調査の概要
全国学力テストの基本的な目的と実施対象
全国学力・学習状況調査、通称「全国学力テスト」は、文部科学省が全国の小学校と中学校で毎年実施している大規模な調査です。その一番の目的は、お子さんたちの学力や学習状況を詳細に把握し、それを学校や教育委員会が授業改善や教育施策に役立てるためにあります。つまり、お子さんの学力を「測る」ことだけでなく、学校全体で「学びをより良くする」ための大切な材料なのです。
具体的には、全国の子どもたちがどのくらい基本的な知識や技能を身につけているか、そしてそれらを活用して考える力があるかを調べています。この調査は、全国の小学校6年生と中学校3年生の全員が対象となります。お子さんがこの学年であれば、実際にテストを受けたことになりますね。
また、学力テストの結果は、各学校や地域ごとの教育課題を見つけ出し、今後の教育の方向性を検討する上でも活用されています。お子さんが通う学校が、どんな点に力を入れ、どんな改善をしているのかを知る手がかりにもなるでしょう。
令和7年度調査の実施科目とCBT形式の導入
令和7年度の全国学力テストは、以下の科目で実施されました。
- 小学校6年生:国語、算数、理科
- 中学校3年生:国語、数学、英語、理科
これらの教科に関する学力調査に加えて、「質問紙調査」も実施されました。これは、子どもたち自身の学習意欲や学習方法、生活習慣、そして学校や家庭での過ごし方などに関するアンケートです。この質問紙調査の結果と学力テストの結果を合わせて分析することで、学力だけでなく、お子さんの学習環境や心の状態がどのように学びに影響しているのかを多角的に把握することができます。
今年の調査の大きな特徴の一つは、中学校の理科が初めてCBT(Computer Based Testing)形式、つまりコンピューターを使ったテスト形式で実施された点です。これにより、これまでのマークシート方式とは異なる、より多様な形式で問題が出題された可能性があります。CBT形式の導入は、今後の学力テストのあり方にも影響を与えるかもしれません。
令和7年度全国学力テスト結果の全体傾向と注目点
令和7年度の全国学力テストの結果が公表され、お子さんたちの学力状況に関する様々なデータが明らかになりました。このセクションでは、文部科学省が発表した全国的なデータや、教育の専門家による分析に基づき、今回のテスト結果から見えてくる全体的な傾向と、特に注目すべき点について解説します。これらの情報を知ることで、お子さんの学習状況を客観的に捉え、今後の学びのヒントを得ることができるでしょう。
全国平均正答率から見る学力低下の傾向
今回の全国学力テストで最も注目すべきは、主要教科の平均正答率が低下したことです。
- 小学校の国語:67.0%(前年度 67.8%)
- 小学校の算数:58.2%(前年度 63.6%)
- 中学校の国語:54.6%(前年度 58.4%)
- 中学校の数学:48.8%(前年度 53.0%)
このように、国語と算数・数学は小学校・中学校ともに、前年度と比べて平均正答率が下がりました。特に小学校の算数と中学校の数学は、5ポイント近くの低下が見られます。
また、2022年度(令和4年度)以来3年ぶりに実施された小学校の理科も、平均正答率が57.3%と前回(63.4%)から下降しました。
「思考力・判断力・表現力」に関する記述式の課題
近年、全国学力テストでは単なる知識を問う問題だけでなく、身につけた知識や技能を活用して自分で考え、判断し、表現する力を測る問題が重視されています。今回の令和7年度調査の結果では特にこの「思考力・判断力・表現力」を問う問題に課題が見られました。
具体的な例として、中学校の国語の平均正答率を問題形式別に比較すると、記述式の正答率が際立って低いという結果が出ています。
- 短答式:73.8%
- 選択式:64.2%
- 記述式:25.6% (3割を下回る)
特に、物語に関して「自分の考えとそのように考えた理由」を書く記述問題では、27.7%もの無解答率にのぼりました。これは、知識を選ぶことや短い言葉で答えることはできても、与えられた情報を整理し、自分の言葉で筋道を立てて説明する力、あるいはそもそも「書く」という行為に慣れていないお子さんが少なくないことを示唆しています。
このような結果は、家庭での会話や読書、考えをまとめる機会の重要性を改めて教えてくれます。学校でも、このような力を伸ばすための授業改善が進められていることでしょう。
テスト結果を学校・家庭でどう活かすか
全国学力テストの結果は、お子さんの学びの現状を知り、今後の成長へと繋げるための貴重なヒントです。単に点数を見るだけでなく、その結果をどう解釈し、どのように具体的な行動に結びつけるかが最も重要になります。
学校における結果分析と授業改善への取り組み
お子さんが通う学校は、全国学力テストの結果を詳細に分析し、今後の教育活動に活かしています。学校がどのような取り組みをしているかを知ることで、保護者としても安心感が持てるでしょう。
一方、都道府県別や学校別の平均正答率を出すことによる過度な競争を煽るという点も指摘されている
学校では学力テスト直前になると対策問題を実施するなど、学習内容が増加し、授業数に制限がある中でさらに負担が増していることを危惧する教育関係者も多いです。
保護者ができる学習サポートとコミュニケーション
全国学力テストの結果は、ご家庭でのお子さんへの関わり方を考える上でも大いに役立ちます。点数に一喜一憂するのではなく、お子さんの「これから」に繋がるサポートを心がけましょう。
- 結果をお子さんと一緒に振り返る: まずはお子さんと一緒にテスト結果を落ち着いて見てみましょう。良かった点や、頑張った点を具体的に褒めることが大切です。その上で、「この問題は難しかったね」「どうしてこう考えたの?」など、お子さんの思考プロセスに興味を持って尋ねてみてください。特に記述式の問題で無解答だった箇所などがあれば、どう書けばよかったか一緒に考える良い機会になります。
- 苦手な分野を特定し、小さな目標設定: 全体の点数だけでなく、どの単元やどの種類の問題でつまずいているかを具体的に把握しましょう。例えば、「分数計算の応用問題が苦手」といった具体的な課題が見つかれば、それに関連するドリルを少しだけ追加したり、オンライン教材の該当箇所を一緒にやってみたりと、小さくて達成可能な目標を設定することが有効です。
- 学習習慣・生活習慣の見直し: 質問紙調査の結果も参考にしながら、お子さんの学習時間、読書習慣、睡眠時間など、生活全体を振り返ってみましょう。もし改善できる点があれば、お子さんと話し合いながら無理のない範囲で少しずつ習慣を変えていくことが大切です。
- コミュニケーションの機会を増やす: テストの結果を通して、お子さんの学校生活や学習への意識について深く知る良い機会と捉えましょう。「学校でどんな勉強をしているの?」「最近面白いと思ったことは?」など、日常的な会話の中で学びへの興味を引き出すようなコミュニケーションを増やすことが、学力向上だけでなく、お子さんとの信頼関係を深める上でも重要です。
【まとめ】
令和7年度の全国学力・学習状況調査の結果公表は、私たち保護者にとって、お子さんの学力や学びの状況を客観的に見つめ直す貴重な機会となりました。今回の結果からは、全国的な学力の傾向や、「思考力・判断力・表現力」を育むことの重要性、そして学習意欲や生活習慣が学力に与える影響が見えてきました。
何よりも大切なのはこれらのテスト結果を単なる「点数」として捉えるのではなく、学校が授業改善にどう活かし、ご家庭でどうお子さんの学習サポートとコミュニケーションに繋げていくか、という視点です。
お子さんの成長は、点数だけでは測れません。しかし、全国学力テストの結果は、お子さんの学びの「今」を知り、より良い「未来」へ繋げるための羅針盤になり得ます。こ
お子さんの結果について疑問や不安があれば、先生に相談してみてください。
さらなる調査結果は7月31日、都道府県別・政令指定都市別の結果は8月以降となる見通しです。
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