2025年春の大学入学生の入試における、2024年の年内実施が話題となっています。受験日程のルールを徹底させたい文部科学省と、学生確保を優先したい大学側の考え方の食い違いがあり、今後どのような展開になるでしょうか。今回は、大学受験の年内実施に関する国土交通省の対応や、大学受験の現状および今後の受験制度について解説をします。
受験の年内実施への文部科学省の対応
文部科学省は、2024年12月に全国の大学向けに受験日程に関する文書を発行しています。以下では、その内容について解説します。
文部科学省の受験時期順守の文書交付
文部科学省は、「大学入学者選抜実施要項において定める試験期日等の遵守について(依頼)」という文書を全国の大学に向けて発行しました。その内容の要旨は、以下のとおりです。
- 本来大学入試は令和7年2月1日から3月25日に行うと実施要領に定めている
- しかし現状はそれ以前の日程で受験が実施されている
- 早期選抜が実施されていることに憂慮:高等学校教育における学びの継続性や教育課程に影響を与えかねない
- 大学入試は他大学に先駆けて学生を確保する目的で実施されるものではないはず
文部科学省は、大学入試の早期化が進むことで、本来の高校および大学における教育機能が損なわれてしまうことに懸念を示しています。
事実上の囲い込みの問題点とリスク
大学入試の年内実施については、特に関西の大学において顕著です。たとえば、近畿大学では「推薦入試(一般公募)」の名目で2024年11月および12月に入試を実施し、多くの学生が受験しています。近畿大学の年内推薦入試は、昭和43年以降同様の日程で実施されているため、大学運営側としては今回の文部科学省の文書に対して「今更ルール違反といわれても困る」という見解を持っています。
大学受験早期化の背景と今後の大学受験制度の在り方
少子化が進行している昨今、大学入試の早期化傾向は今後さらに顕著になっていく可能性があります。今後の大学受験制度について、考えてみましょう。
総合型選抜など多様化する選抜方法
近年の大学受験は、旧OA入試から発展してきた総合型選抜など、多様化しています。大学側としては、少子化の進行により学生の確保が難しくなっている状況において、早期受験による囲い込みをしたいと考えていると予想できます。少子化は今後ますます進行していくと予想され、選抜方法の多様化はさらに進んでいくと考えられます。
主体性の評価と公平性の確保を両立する困難さ
選抜方法の多様化は、学生の主体性評価と公平性確保の両立の困難さを抱えています。これまでの判断基準で合った学力よりも、本人の人間性や特定の能力に秀でている点などを評価するのが総合型選抜など新しい選抜の特徴です。一般入試で受験をする学生は従来通り学力を伸ばして受験に臨みます。大学側には、新しい選抜方法で大学入学を目指す学生との間で不公平感が出ないような基準作りをすることが求められます。
受験制度の変化は高校教育にも影響を及ぼす
受験制度の変化は、高校教育の内容や日程にも影響が及ぶと考えられます。受験の日程が前倒しになることで、それに合わせたカリキュラムを高校側でも検討する必要が出てくるかもしれません。また、早期に合格が決まる学生と、従来通り卒業前に合格を得る学生との間での公平性についても考慮する必要があるでしょう。
今後の大学選抜の動向に注目が集まる
今後大学受験を目指す学生は、文部科学省と大学側のやり取りを注視し、大学側の取り組み方をチェックしておく必要があります。昨年度と同じタイミングや内容で大学受験が実施されるとは限らないという意識を持って、大学入試の準備をする姿勢が望ましいです。学生の負担を少しでも軽減できるよう、文部科学省や大学はもちろん、高校側のサポートも今まで以上に充実してくれることを期待します。
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