教育費を準備したくても「貯蓄に回す余裕がない」と感じているご家庭は少なくありません。しかし実際には、日々の家計を少し工夫するだけで、月1万円、2万円の貯蓄原資を生み出すことは十分可能です。
この章では、固定費と変動費に分けた見直し方法から、無理のない節約術まで、教育費を捻出するための具体的なコツを解説します。
まずは「支出の棚卸し」から始めよう
貯蓄ができない家庭の多くは、「家計の全体像を把握していない」ことが原因です。まずは家計簿アプリやエクセルなどで1か月分の支出を記録し、以下の3つに分類しましょう。
- 固定費(毎月変わらずかかるもの):家賃、保険料、通信費、ローンなど
- 変動費(使う量によって変わる):食費、日用品、外食、レジャー費など
- 突発費(年1〜2回発生):冠婚葬祭、旅行、医療費など
この「見える化」だけでも、無駄な支出の存在に気づくケースは非常に多いです。
固定費は“一度見直せば効果が続く”コスパ最高の節約対象
① スマホを格安SIMに変更する
大手キャリアから格安プランへ変更するだけで、月3,000円〜5,000円の節約が可能です。家族全員分を見直せば、年間10万円以上の差も。
② 保険を見直す
教育資金のために学資保険に入るのは有効ですが、医療保険・生命保険が過剰になっていないか要チェックです。**「掛け捨て型+貯蓄で備える」**という考え方も選択肢の一つです。
③ サブスクの整理
動画配信、音楽、ネットサービス…気づけば月額課金が増えていませんか?必要なものだけを残し、年に1回見直すクセをつけましょう。
変動費は「ルール化」で楽に節約できる
① 食費は「週予算」で管理
1週間分の予算を決めて買い物をすることで、ついつい買いすぎを防げます。ポイントは、「毎回レシートを確認する」こと。
② 外食・レジャーの頻度を調整
「外食は週1回まで」「月2回はお弁当持参で公園」など、無理のないルールを家族で共有することで、ストレスなく節約が可能です。
③ ポイント還元・ふるさと納税を活用
楽天・PayPayなどのポイント経済圏を活用することで、実質的な支出を減らせます。ふるさと納税は教育費に使える日用品や食品の調達にも便利です。
教育費専用の「貯蓄口座」を分けるだけでも効果大
貯められない人に共通しているのが、「使ってはいけないお金と、自由に使えるお金の区別がない」ことです。
教育費は、通常の生活費口座とは完全に別の銀行口座で管理しましょう。
見える化するだけで、「今月あと少し頑張ろう」という気持ちが生まれ、自然と節約行動につながるという心理効果もあります。
月2万円が作れれば、将来の不安が大きく減る
仮に月2万円を教育費として確保できれば、以下のような積立が可能になります。
- 10年で240万円
- 15年で360万円
- 18年で432万円(大学入学金レベル)
これは「収入を増やさなくてもできる」目標です。
大切なのは、節約=我慢と考えないこと。目的が「子どもの未来を守ること」なら、取り組む価値は十分あるはずです。
奨学金・教育ローンの選択肢と注意点
教育費を全額貯蓄でまかなうのは理想ですが、現実的には「奨学金」や「教育ローン」に頼らざるを得ない家庭も多くあります。事実、大学生の約半数が何らかの奨学金制度を利用していると言われています。
しかし、安易な利用にはリスクも。ここでは、奨学金と教育ローンの基本的な仕組み、利用時の注意点、そして「借りないで済ませる」ための考え方も含めて解説します。
奨学金の種類と特徴
日本学生支援機構(JASSO)が提供する奨学金は大きく2種類あります。
① 第一種奨学金(無利子)
- 所得制限あり(家庭の年収基準を満たす必要あり)
- 成績や家庭状況によって審査
- 月額2〜6万円程度が多い
利息がかからず、学生にとって最も負担の少ない制度です。可能であれば最優先で申請すべき選択肢ですが、所得条件や成績によって制限があります。
② 第二種奨学金(有利子)
- 所得制限が緩やかで利用しやすい
- 利息は上限3%(在学中は無利息)
- 月額3〜12万円まで自由に選べる
利子がつくとはいえ、金利はかなり低く抑えられており、金融機関のローンよりは圧倒的に有利です。ただし、卒業後に数百万円の返済義務が発生するため、将来の生活設計に影響します。
給付型奨学金という選択肢も増加中
最近は、返済不要の「給付型奨学金」の制度も充実しています。たとえば、
- 住民税非課税世帯の子どもに月3〜7万円支給
- 高校3年時に「進学支援新制度」として申請可
条件はありますが、対象に該当する家庭にとっては非常に大きな支援になります。申請時期・条件を逃さないよう、早めに情報収集をしておきましょう。
教育ローンの主な選択肢
① 日本政策金融公庫「国の教育ローン」
- 上限350万円(子ども1人あたり)
- 利率:年1.95%(2025年6月現在)
- 返済期間:15年以内
- 保証人あり or 保証料加算方式
公的機関のため、金利が比較的低く、安定的な条件で借りられます。入学金の支払いや急な進学資金に対応しやすいのが特徴です。
② 民間の教育ローン(銀行・信販系)
- 上限500万円〜1000万円(金融機関による)
- 利率:年2〜5%前後
- 手続きが早い反面、審査は厳しめ
民間の教育ローンは、スピード重視・柔軟性は高いものの、金利が高めで返済負担も重くなるため、比較・検討が重要です。
■ 利用する際の注意点
- 借りすぎに注意!
毎月の返済額は将来の生活に重くのしかかります。将来の収入見込みと生活設計を見越して、必要最低限の利用を心がけましょう。 - 返済シミュレーションは必須
たとえば月5万円×20年で返済すると、総返済額は1200万円に近づきます。借入前に必ずシミュレーター等で月々の返済額と生活への影響を確認してください。 - 親と子の話し合いを忘れずに
誰が借りるのか(親名義 or 子ども名義)、誰が返すのかを曖昧にしておくと、家族間でトラブルになりかねません。
奨学金は“最終手段”として考えるのが理想
もちろん、すべての教育費を貯金だけでまかなうことは難しい時代です。しかし、だからといって「借りて当然」になってしまうと、将来の負担は確実に子どもへと引き継がれます。
教育費の準備は、奨学金やローンに頼らなくて済むよう、できる限り早く・小さく・長く続けることが、最も家族の幸せにつながるのです。
祖父母からの贈与を活用する方法
教育費の準備というと、つい「親がすべて負担するもの」と考えがちですが、近年では**祖父母からの支援(贈与)**を活用する家庭が増えています。特に、おじいちゃん・おばあちゃんに「孫の教育に使ってほしい」という意向がある場合、税制優遇を活かすことで効率よく資金移転が可能です。
ここでは、祖父母からの贈与で教育資金をサポートしてもらう際の制度や注意点を解説します。
教育資金の一括贈与にかかる非課税制度とは?
2024年以降も継続されているのが、**「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」**です。
▽制度の概要
- 祖父母(または両親)から、孫(30歳未満)への教育資金贈与について
- 最大1,000万円まで非課税
(うち、学校以外の教育費は500万円まで) - 金融機関を通じて信託や専用口座に預け入れるのが条件
- 支出の都度、領収書を提出して払い出す仕組み
対象となる教育資金の範囲
- 授業料・入学金・施設費・受験料
- 学習塾・習い事・留学費用
- 教科書・制服・教材・交通費 など
制度を利用する際のポイント
① 受贈者(孫)が30歳になるまでに使い切ること
この制度はあくまで「教育資金用途のための一括贈与」です。30歳になった時点で使い切れなかった金額がある場合、その残額に贈与税が課税されます。
② お金の管理は信託口座や金融機関の専用商品で行う
「贈与して終わり」ではなく、制度の適用を受けるには指定金融機関にて管理される仕組みにする必要があります。通常の口座では適用されないため、制度対応商品かどうかの確認が必要です。
③ 実際の支出のたびに領収書などを提出
教育資金を使うたびに金融機関へ支払い申請を行い、用途証明として領収書の提出が求められます。少し手間はありますが、非課税の恩恵を受けられる価値は非常に大きいです。
祖父母自身にとっても相続対策になる
この制度の活用は、実は祖父母本人にとってもメリットがあります。それが相続税対策です。
通常、贈与をすると「生前贈与」として課税対象になりますが、この制度を使えば贈与税も相続税も対象外で、将来の遺産が減少します。その分、子ども・孫世代への資産移転がスムーズになり、「相続トラブルの予防」にもつながります。
その他の贈与制度も併用可能
- 年間110万円までの贈与は非課税(暦年贈与)
→ 教育目的以外でも活用可能。シンプルで管理も簡単です。 - 住宅資金の贈与特例(最大1000万円まで)
→ 教育費とのバランスを見ながら組み合わせが可能。
いずれも適切な手続きを踏むことで、税金を最小限に抑えながら子どもの将来のために資産を活かすことができます。
注意すべき落とし穴
- 「渡したつもり」が課税対象になることも
→ 書面や記録を残しておくことが重要です。 - 生活費や遊興費に使うとNG
→ 教育目的であることを証明できる領収書等を必ず保管。
祖父母の協力を得ることができれば、教育資金の準備は一気に現実的になります。感謝と透明性を大切にしながら、制度を正しく活用しましょう。
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